前回、パラゾールの成分である「パラジクロロ(ル)ベンゼン」も危険であることを書きました。
もう少し、詳しく説明します。
台湾を旅すると、日本統治下の面影を垣間見ることがあります。私が一番に印象に残っているのが、大正四年に出された台湾総督府の北投温泉ほかの「ラジウム鉱」の調査報告書、二番目が樟樹(クスノキ)の大木でした。戦前は樟脳が大産業を築いていたのです。子供のころ、笹船や木の切れ端の舟に樟脳を船尾に付けて、推進力を得て遊んだのを覚えている人は、もはや老人(70歳以上)ばかりです。現在でも台湾には、樟樹(クスノキ)が沢山残っているのです。製品も残っています。(販売している。)
樟樹(クスノキ)から、有効成分の「樟脳」を取り出すのには「水蒸気蒸留法」を使います。蒸すのです。水蒸気と一緒に樟脳が気体となって蒸発して来るのです。水には溶けません。そして成分の樟脳は、結晶となって得られます。部屋に置いておくと、樟脳は液体にならずに、気体となって蒸散して行くのです。
この性質を利用して、衣服の防虫に使うのです。液体にならないので衣服を汚すことがないのです。
終戦後、樟脳に代わって「ナフタレン」と「パラゾール」が出現しました。どちらも固体から気体へと「昇華」するのです。ナフタレンは、石油ナフサより得られるのでこの名前がつけられています。ナフタレンは脂溶性であり、体内に吸収されやすく、排除しにくい性質があり、溶結性貧血を起こしやすく、毒性が強いため、殺虫剤や忌避剤として使用が禁止されました。
一方の「パラゾール」は、防虫剤とトイレの消臭剤として販売されています。
パラゾールの成分「パラジクロロベンゼン」の化学式は「C6H4Cl2」です。
有機塩素系の殺虫剤です。構造が安定的であり、分解されにくい性質があり、脂溶性ですので、水に溶けにくく体外に排出しにくい、体内に蓄積されやすい性質があります。また、衣類でも動物の毛、合成皮革、そして金や銀などの装飾品があるものは、化学反応を起こしやすいので避けるべきです。(腎臓や肝臓に影響を与え、幼児や妊産婦は特に注意が必要です。)
また、樟脳の溶ける温度は180℃ですが、パラジクロロベンゼンは60℃と低く、この点も危険度が高くなります。