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長崎県立総合運動公園様

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長崎県立総合運動公園
グラウンドキーパー 清水邦彦氏

2014年10月12日から第69回国民体育大会「長崎がんばらんば国体2014」が長崎県内を会場に開催され、そのメイン会場となるのが長崎県立総合運動公園だ。ここはサッカーJ2リーグに所属する「V・ファーレン長崎」のホームグラウンドでもある。総面積50,000㎡におよぶ広大な敷地を管理するのがグラウンドキーパーの清水邦彦氏。極力農薬を排除しIPM(Integrated Pest Management :総合的病害虫管理)の発想に基づいた芝管理を始めて5年、現在はほぼ無農薬でのコントロールが可能になっている。

健全な芝生を維持するために健全な根を育成するという発想

長崎県立総合運動公園のメイン競技場は、2万人収容の全周屋根スタンドと400m×9レーンのトラックに加え、太陽光発電や雨水貯留槽の設備も備える第1種公認陸上競技場。この競技場の管理だけでも神経を使う仕事だが、この他にサブ競技場や芝生広場、野球広場など5つの施設があり、これらすべてを清水氏を含む2名で管理する。

「これだけの広さを2名で管理していることを知ると、大抵の方は驚かれます。もちろん簡単ではありませんが、綿密に作業計画をたてること、その作業に優先順位をつけることで、ムリ・ムダ・ムラのない管理を心がけています。」

作業計画はまず土壌の分析から始まる。土壌分析データは年間の作業計画を決定するうえで重要な拠り所となる。

「健全な芝生を維持するためには、まず根を健全にする。“健全な根”を維持するために何をすべきか、ということに芝草管理の主眼をおくことが大切だと思っています。根は土壌にありますから、まず土壌の状態をきちんと分析することが必要なのです。」

現在この施設の芝生は、清水氏の提案によりIPMに基づいた管理手法がとられている。

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これは過去に行った芝草管理手法への反省に基づいているという。

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「この施設を担当する前にある競技場のグラウンドキーパーを務めていましたが、そこでの芝草管理は典型的な対症療法でした。新米のキーパーだった私は、農薬と化学肥料を用いた管理を行いました。病害虫を防ぐために殺菌剤や殺虫剤を散布し、次は芝の育成を促すために化学肥料を投入する。そうすると今度は肥料によって病害虫が発生し、再び農薬を散布する、ということの繰り返しでした。」

そうした管理手法が通例となっていたために、清水氏は特に疑問も持たなかったそうだが、あるとき、いぶかしく感じた出来事があったという。

「冬の芝の手入れとして農薬を入れても効かないことがあって…栄養剤も効かない。量を増やしても一向に変わらない。何故だろう、何が起きているのだろう、と焦るのみ

で解決策が見つからない。今考えれば、無知の極みで、まったく芝の生理をわかっていなかったんですね。」

芝の種類によるが、12〜2月くらいの冬期には休眠期に入るものが多い。この時期には施肥を控え、芝を休めることが大切だ。清水氏は冬のこの経験から、きちんと勉強し直す必要性を感じたという。

0040「そんな時に沼田さんに出会い、芝に関する様々な知識に触れました。そうして芝生を知れば知るほど、対症療法のムリ・ムダを認識するようになりました。」
(株)栗山建設の沼田貴人氏は造園施工管理技士の資格を持つスペシャリストで、実証データに基づきながら、減農薬栽培を推奨している。沼田氏との出会いは清水氏を大いに刺激するものとなった。
「対症療法ではなく、芝草自身に免疫力を高めることこそが重要だと思い至りました。免疫力をつければ、病害虫に強い芝も作れるはず。そこでIPMに基づいた芝草管理をスタートさせたのです。」

肥料なしで管理する「芝生広場」。未分解サッチのコントロールが決め手

長崎県立総合運動公園003IPMを標榜することは、それまで経験してきた管理方法を180°転換させるものだったが、そこに迷いはなかった、と清水氏。

「ここのグラウンドキーパーに就く前に、沼田さんから実験データを見せていただいたり、実際に減農薬で管理されている施設を見学させてもらったりして、IPMに対する理解を深めました。そういう経験がなかったら、農薬を散布しない、という選択は非常に難しかったでしょうね。」

農薬と化学肥料での管理が当たり前の状況下では、使用をやめることで何か芝への悪影響が及ぶのではないかという不安の方がどうしても先行してしまうのだ。清水氏は知識と技術を身につけることでこうした不安を払拭し、現在、この総合運動公園内には無農薬無施肥で管理するエリアまで誕生させた。

「およそ15,000㎡ある『芝生広場』を無農薬無施肥で管理しています。ポイントはサッチのコントロールです。【ブンカイザー】で長年蓄積しているサッチを分解し、富栄養化することで土壌の肥沃化を図っています。さらに【バイオCAIYA】で土壌微生物を改良しながら、植物自体の健康度を高める管理をしています。」

芝生広場は、連日、午前中はグラウンド・ゴルフとターゲット・バードゴルフに使われているが、芝がはげることもなく、青々とした力強さを保っている。

「これがバイオの力なんですね。たとえば病害虫を駆除する目的で農薬を使えば、土中の糸状菌をも殺してしまいます。糸状菌にはサッチを分解する働きもありますから、農薬を使えば使うほどサッチは分解されにくくなってしまうのです。糸状菌が病気の根源のような捉え方をされる場合がありますが、そうではなく、土壌環境のバランスの問題なんですね。土壌を知り、そこから植物に最適な環境を考えることが大切だと思います。」

サッカーに特徴的な芝の痛みや虫除けにもバイオメンテナンス

県立の施設であり、またサッカーチーム『V・ファーレン長崎』のホームグラウンドでもあるため、グラウンドの使用頻度も来場者数も多い。

「V・ファーレン長崎の試合や練習試合が月6回程度あります。陸上の大会や練習は月5回、そのうちやり投げやハンマー投げなど芝生を使うものが2回程度あります。フィールド内は年間100日くらい使っていることになりますね。」

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とにかく利用者が多いので、メンテナンスの調整は頭を悩ますところだという。

「時間がかかるメンテナンス作業については空いている日を選んで1カ月前にはスケジュールを組みます。しかし、突然に使用要請が入れば中断せざるをえず、利用状況をみて、その合間で調整しながら作業を行っています。」

答えが出るバイオ製品を使うことで芝草管理の醍醐味を知る

総敷地面積50,000㎡ある施設だが、清水氏は毎日、すべて見て廻るという。

「一番に点検するポイントは病害虫です。それから芝の色つやを確認します。触ってみて、栄養素がきちんと行き渡っているかや繊維質の具合を確かめます。特にここは有機栽培に近いかたちで管理しているので、不具合を見落として対応が後手にならないように気をつけています。」

現在、資材のおよそ9割がバイオメンテナンスのもので、化学的な資材は1割にも満たない。

「ゆくゆくは完全無農薬をめざしています。バイオメンテナンスの資材は、答えがきちんと芝に出てくるところが魅力です。化学的な資材に比較すると、高価ではありますが、年間での資材予算の支出で考えれば、むしろ割安。コストパフォーマンスは非常に良いと思います。」

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なんといっても芝に確かな手応えが現れると、無農薬で管理することの不安や難しさも消えてしまうという。

「土壌を知るところから芝管理を始めると、いま芝が何を求めているのかがだんだんとわかってくるんです。だから、無農薬での管理は難しさよりも楽しさを感じるようになってきました。芝生を育てることの奥深さを日々感じながら作業をするのは本当にやりがいがあります」

いまは国体に向けてその準備に余念がないが、国体会場として無事にその役目を果たせた後は、Jリーグベストピッチ賞をめざしたいという。

「このグランドが長崎を盛り上げるきっかけづくりになる。そんな存在でありたいと常に思っています。賞をとることでさらに皆さんにアピールできるようになりたいですね。そして個人的には、仕事力をさらに深めるために1級造園施工管理技士の資格をとりたいと考えています。」

清水氏が見据える目標は先へ先へと進んでいる。

長崎県立総合運動公園マップ
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九州地区代理店からひとこと

沼田貴人氏 (株式会社栗山建設 スポーツターフ事業部 部長/1級土木施工管理技士、1級造園施工管理技士)
清水さんとは10年来のおつきあいになります。長崎県立総合運動公園の芝生はIPMでの管理が見事に結実している例です。ほとんどの競技場やゴルフ場では芝管理の資材の8、9割が農薬・化学肥料ですが、ここでは資材全体に農薬・化学肥料が占める割合はわずか1割。無農薬までもう一歩のところまできています。当社ではバイオ製品を自社内で実験してデータを蓄積しながら、それをもとにお客さまに資材のご提案をおこなっています。これからも、清水さんには新たな実験データを提示しながら、無農薬管理に向けたサポートをさせていただきたいと思っています。

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