泉国際ゴルフ倶楽部
グリーンキーパー 高橋 伸治 氏
泉国際ゴルフ倶楽部は1977(昭和52)年に開場、宮城県仙台市内から15kmの好立地にあり、泉ケ岳のふもとの丘陵地に広がる風格漂うコースだ。グリーンの美しさ、早さには定評があり、他県からもプレイヤーが訪れるほど人気が高い。常にベストなグリーン・コンディションを保つために様々な工夫を重ね、芝の管理をしているのが高橋伸治グリーンキーパーである。40年以上に及ぶキャリアの中で身につけた豊かな経験値と些細なことも見逃さない洞察力で細やかなケアを実践するグリーンの達人だ。
キーパーとしての哲学は『労を惜しまずに芝と向き合う』こと
グリーンの仕事にたずさわって40年。高橋伸治氏は地元である宮城はもちろん、関西や四国、沖縄など気候の異なる数々のコースを経験し、7年前から泉国際ゴルフ倶楽部のグリーンキーパーに就いている。
「18歳の時にこの世界に入り各地のコースで仕事を経験させていただきました。もともと自然の中での仕事に憧れたのですが、もちろん現実はそんなに生易しくない。一度どうにもつらくなって、他の仕事に就いたことがあるんです。そしたら途端に体を壊してしまって…またグリーンの仕事に戻りました。ハードな仕事ではあるけど、三食きちんと食べて規則正しい生活が出来ますから、それが自分には合っているのかなと思います。」
各地のコースの諸先輩に学びながら、自分なりのグリーン哲学を作り上げていったが、その筆頭には『労を惜しまずに芝の“顔”を見ながら手入れをする』ことがあげられるという。
「今でも朝昼晩、必ず各ホールを回り、グリーンの顔を見ます。朝一番に見て、散水量はこうしよう、そろそろ転圧をかけようか、ちょっと栄養をあげようか、とか考えます。毎日違う顔をしていますからね、芝は。何か様子がおかしいなと思ったら芝の匂いを嗅いで確かめることもよくあります。」
普段から地道な観察とケアを欠かさない髙橋氏。泉国際ゴルフ倶楽部は、雪解け間もない北国の春に青々としたフェアウェイを披露するが、それも髙橋氏の日頃の丹念なコントロールの賜物である。
「やはりキーパーとしては春一番にプレーしてくださるお客様を見た目も美しくインパクトあるコースでお出迎えしたい、というのがありますね。プレーするモチベーションが違いますから。」
そこで役立っているのがバイオメンテナンスの【バイオ補酵素】だという。
「ティーグラウンドとアプローチ、フェアウェイにはすべて毎年【バイオ補酵素】を使っています。雪が溶けた時点では多めに撒いています。すると高麗の芽吹きも芽出しも良い。目砂も入れて早めの対策をします。見栄えが違いますね。5月の連休のかき入れ時には小気味良く仕上がったフェアウェイにすることができるんです。」
些細なことの積み重ねの先に美しいグリーンがある
日常における丹念な観察と工夫を怠れば、芝はたちまち劣化することが珍しくない。大阪にあるコースを担当したときには面食らったことがあるという。
「大阪は夏になると35℃以上40℃近くになることもままありますよね。風もあまり動かない。そんなある日、午前中にグリーンを確認して、特に問題がなかったのでお昼を食べにいったんです。ところが戻ったら、グリーンが赤茶けている。しまった、と思って、とにかく大量に水をかけて回りの空気を冷やすようにしました。それまで経験したことのないような酷暑でした。たった1時間でこんなに状態が変わるなんて、カルチャーショックでしたね。」
日本各地のコースを経験した髙橋氏だが、なかでも特に印象に残るコース整備がある。
「1年という期限付きでキーパーを依頼されたことがあります。27ホールある立派なコースなんですが、その前年に芝を全部ダメにしたとのこと。ちょうど芝の張り替えが終わったころに赴任したんですが、前年に芝が全滅した原因を探らなければなりません。各ホール4、5カ所ずつソイルサンプラーで抜き取って土壌を見てみたんです。そうしたら、あるところでは地上より3cm下、また違うところでは17cm下にそれぞれ3〜4cmのブラックレイヤー層ができていました。芝を張り替える前に盛り土をした場所があり、それが17cmも下にブラックレイヤー層ができた原因でした。」
そこから髙橋氏の挑戦が始まった。地下17cmに不透水層を形成する土壌をいかに正常に戻していくかである。
「とにかく土中に水と空気を通さなければなりません。バーチドレンを使って、250mmのコアリング・タインをつけシャタリングを行いました。27ホールあるので、9ホールずつ、平日2日間閉鎖し、2日間で更新作業を行っていきました。1回だけでは効果が限定的ですから、シャタリングは継続的に行いました。」
1度目のシャタリングのあとは砂利、2度目は粗い砂、3度目に仕上げ用の細かい砂、というように目砂の大きさも変えていった。
「この作業によって、芝が下へ根をはれるようになり、今度はブラックレイヤー層を養分にしながらどんどん伸びていったんです。丈夫な張りのある芝が出来上がっていきました。やはりキーパーはどんな小さなことも見逃さず、手間をかけながら地道に世話をし管理していくことが基本だと思いますね。」
どんな状況にも対応できる力量を持ってこそのキーパー
芝にとって何が効果的かを考える髙橋氏の姿勢は、薬剤や肥料の散布量に関しても一家言を持つ。
「若い頃先輩キーパーに教えられたのが『病気は小さいときに見つけて少量の薬で退治しろ』ということ。これは今でも実践しています。例えば、病気が広がったら1000リットルのタンク車で何面か撒かなきゃいけないかもしれないけど、小さいうちに見つけたら、噴霧器で5リットル撒けば収まりますよ。小さいうちに見つけることが芝全体のためにもいいことだし、費用も少なくてすみます。」
良い芝は一朝一夕にはできない。グリーンキーパーは試行錯誤しながら最善の道を探る。
「シーズンとお客様のニーズを考え、思ったように芝をコントロールできるキーパーが一流だと思います。トップシーズンの早い芝が望まれるときには芝を細くしてスピードが出るようにする。ただ、それは少なからず芝にダメージを与えますから、そうした無理に耐えられるような芝にしておく必要もあります。栄養をどのタイミングでどのように与えていくか、それもポイントなんですね。」
費用をかければ良い芝ができ上がるという保証はない。最少の投資で最大の効果が出ることが望ましい。
「バイオメンテナンスの資材を使い続けるのも確かな効果が望めるからなんです。分析データを見れば、その違いが一目瞭然です。」
良好なコンディションを保つ工夫を継続していく
泉国際ゴルフ倶楽部は開業から40年近くが経つ。その年数を老朽ではなく風格に変えるのがキーパーの仕事だ。
「年数がたてば樹木は大きくなりますから間引き伐採をしなければいけない。芝だって10年経てば歳をとるし、排水もどんどん悪くなっていく。でもそれはあたりまえの自然の流れです。そこに新しい種を撒く、排水を取り直す。ひとつ一つ整えてメンテナンスして良い方向へ育てるのがキーパーの仕事なんです。」
同ゴルフ倶楽部は現在プレーヤーの評判も上々で客数も増加傾向にある。だからこそ、ケアに気を抜くわけにはいかないという。
「グリーン・コンディションはかなりいい状態で推移していますが、ダラースポットが懸念材料ですね。施肥との関連もあると思いますが、ところどころに出てしまうんですね。薬剤散布はしていますが、アミノ酸の投与がいいのかなと考えているところです。バイオ資材の【夏の活緑】【冬の活緑】、もしくは【ターフ一番搾・原末】を使おうかなと考えている最中です。」
髙橋氏はいま若い世代に、その細やかな気配りに基づいたキーパー術を伝授中だ。
「いいコースでプレーしなさい、良い芝をたくさん見なさい、と言っています。確かに生き物が相手ですし、天候という自然現象も大きくかかわりますから、何をすればいいか難しい場合も多々あります。絶対的な正解も存在しない。ただグリーンの管理は先手必勝なんです。後手に回ったら取り返しがつかない。だからこそ、毎日毎日何回も芝を見るんです。一日の中でもどんどん変化しますから、そのサインを見逃してはいけません。」
とことん芝を愛し考え抜く髙橋氏のDNAが次の世代へ受け継がれようとしている。
代理店:アグリ仙台株式会社
代表 菊地 修
泉国際ゴルフ倶楽部さんとのおつきあいは10年くらいですね。髙橋さんの前任の小山キーパーの時代に【Dr.芝用補酵素】を使い始めていただいて、髙橋キーパーにも引き続きご使用いただいています。
髙橋さんは嗅覚の鋭いキーパーさんです。コスト感覚に優れ、費用に引き合う効果がきちんと得られるのかどうかを重要視されます。こちらもあらゆるニーズにお応えできるように、様々なデータを提示しながら適切な資材のご提案をさせていただいています。