漆器は英語で「Japan」と呼ばれています。日本を代表する工芸品です。
「うるし科」の植物には、「ウルシノキ」「ヤマウルシ」「ハゼノキ」「ヌルデ」などがあり、触れるとかぶれます。このうち「漆」として使用されるのは「ウルシノキ」です。海外では、「アンナン・ウルシ」「ビルマ・ウルシ」「カンボジア・ウルシ」などがありますが、成分に差があります。また、同じ樹でも「産地差」があり、「採取部位」によっても、季節によっても違いが出て来ます。
「うるし液」の主成分は、「ウルシオール」と「ラッカーゼ」で、「ウルシオール」の含有率が日本産漆で約66%、中国産漆で61%~63%、ベトナム産漆で約34%です。
漆の効果は、「保護」「防虫」の他に「充填」「接着」の働きがあります。この働きは、短期間でなく何百年と続きます。上塗りを重ねることで文化財の維持に欠かせないものです。青森県の三内丸山古墳から縄文時代の漆器が出土しています。その皿は太古の鮮やかな朱色をとどめています。漆は一旦固まると、酸、アルカリ、アルコールや有機溶媒、高熱にも耐える強靭な塗膜を作るのです。
漆の乾燥、固まるのは、水分や溶剤が蒸発することでは得られません。ここが重要です。漆は主成分の「ウルシオール」が「酸化酵素・ラッカーゼ」との反応で得られるのです。即ち「酵素が高分子を作る」という反応なのです。空気が乾燥していると反応が遅れ、結露しやすくなり、反対に湿度が高すぎると反応が早くなりすぎます。適度な湿度と温度が要求されるのです。25℃前後、湿度80%前後が望ましいのです。
ウルシオールは鉄分と反応して黒くなります。これを利用したものが「黒漆」です。
漆に顔料を加えて「彩漆」「絵漆」「箔下(金箔・銀箔)漆」として利用されています。
光沢を得るために、亜麻仁油、桐油、荏油などを混ぜて使われています。
重ね塗りを繰返し、表面を磨き続けて光沢を得る方法もあります。(呂色磨き)
この他、「平蒔絵」「高蒔絵」「肉合研出蒔絵」などの「蒔絵」や、「梨子地塗り」や「螺鈿」などの技法もあります。
日本古来の「酵素反応」文化を、是非広めて戴きたいと思います。