「こけら落とし」の言葉の元となっている「こけら葺き」について説明しましょう。

まず、「杮(こけら)」という語源は、「木屑」「木の削りくず」を指しています。「木削」を「こけづり」と言い、「木切」を「こきれ」「こけら」とも言います。また、日本各地で「魚鱗」「うろこ」を「こけら」とも言います。

従って、「こけら葺き」という言葉は、「木切れで、鱗のように屋根を葺く」やり方を指しています。木材の「小さくした薄板を重ね合わせる屋根葺きの技法」を指しています。

 

屋根の技法には

「茅(かや)葺(ぶ)き」

「檜(ひ)皮(わだ)葺(ふ)き」

「杉(すぎ)皮(かわ)葺(ふ)き」などから

「栩(とち)葺(ふ)き」

「木賊(とくさ)葺(ふ)き」などが発達して

「杮(こけら)葺き」になっています。

 

「栩(とち)葺(ふ)き」は、

「大和葺(やまとふ)き」とも言われ、

「呉葺(くれふ)き」がモデルとなっています。

 

「呉竹(くれたけ)」「呉(くれ)牛(うし)」「呉服(くれはとり)」「呉(くれ)藍(あい)」などの語源になっている「呉(くれ)」の文化です。「呉服(ごふく)」は「呉服屋さん」、「呉(くれ)藍(あい)」は「紅(くれ)藍(ない)」などの名残を留めています。(日本に仏教が伝来する以前の外来文化です。・・・「呉」に「言」を付けて「誤(ご)」と読ませたのも、日本に根付いていた先入りの外来文化「呉(くれ)文化」の否定からです。)

 

ついでに、時代が下ると「瓦(かわら)葺き」「鉛(なまり)葺き」「銅(どう)葺き」などの屋根が出現して来ます。

「こけら葺き」に使われる「こけら板」は、木目が通った、撥水性が高い木材が選ばれます。具体的には、ヒノキ、サワラ、杉、エノキなどの「柾目」の木材が選ばれています。

 

しかも、「木の目」を切らないように、木の繊維方向に「手割」で割いて行きます。回数を重ねるごとに「薄く」なって行くのです。自然の凹凸が残るので、「竹釘」を使って密着させ、空気は通るけど、雨水は通さない屋根を造り出すのです。