酵素というと、私達は「消化酵素」を思い浮かべます。食べたものが様々な消化酵素によって分解され、吸収され、体内で栄養成分となることを教わりました。
前の章で、「植物の病気」や「土壌での残渣分解」が微生物の働きであることを、説明致しました。永続性のある地球自然環境が微生物による分解によって循環していることも説明致しました。
実は、こうした微生物の働きの源は、微生物の分泌する「酵素」の働きなのです。
人間は「体内消化」で、胃や腸で消化しますが、微生物は「体外消化」で、細胞の外側に消化酵素を分泌するのです。細菌や糸状菌など微生物は、体外消化の酵素によって互いの勢力争いも行っているのです。他の(人間にとっての)病原菌を抑制する酵素を取り出したものが「抗生物質」と呼ばれているのです。青カビより取出した酵素が「ペニシリン」と呼ばれているのは、ご存じだと思います。放線菌より取出した「ストレプトマイシン」「クロラムフェニコール」や、細菌より取出した「ポリミキシン」「グラミシジン」などが有名ですね。
微生物の効力の正体は「酵素」なのです。
ついでに、ウィルス、それ自体は代謝も増殖もしていない非生物です。それ自体は毒も出していません。生きていないので「殺菌」も「消毒」もできないのです。(ウィルスは、寄主細胞のDNAやRNAに成りすまし、寄主細胞をハイジャックして増殖するのです。)
酵素とは、物質の合成と分解に携わる、触媒的な化学反応を促進する物質です。
それぞれの生物の中で、生理的過程の速度を速める主要な因子となっています。
植物も動物も生体内で進行する化学反応のそれぞれに、触媒作用を発揮する酵素が存在しています。
酵素は、一つの酵素が一つの物(基質)を触媒する、酵素とその基質は、鍵と鍵穴のようなもので、相補的な構造をしていて、電気的に引き合うようにアミノ酸が並んだ電子的な相補性を持っています。
そして、酵素反応には、反応速度に最適なpHや温度があります。