久米カントリークラブ
グリーンキーパー 巻島恒夫 氏
「晴れの国おかやま」というキャッチフレーズが示すとおり、岡山県は降水量が1ミリ未満の日が年間276.8日(気象庁 全国気候表 1981~2010年の平均値)で、全国第一位。その岡山県のほぼ中央、津山盆地の中に『久米カントリークラブ』がある。1982年、85年には三菱ギャラントーナメントが開催され、チャンピオンシップコースとしてプレーヤーの意欲をかきたてている。現在このコース管理にあたっているのが巻島恒夫グリーンキーパー。初心者からシングルプレーヤーまでが楽しめるコース作りをこころがける。
思ったとおりにいかないからこそ奥深いキーパーの仕事
もともと土木技術者だった巻島氏。24年前、久米カントリークラブが新たな造成を予定していた際、土木に詳しい人材をとのぞまれ、芝管理にたずさわるようになったという。
「キーパーになってから18年が経ちますが、もの作りという点においては土木も芝管理も同じだと感じます。自分が頭に思い描いたことをどう具現化していくか、という点が大切です。ただ、土木の場合は適切に仕事を積み重ねていけば、ほぼ思いどおりに仕上がりますが、芝の場合はそうはいきません。順調に積み重ねていると思っていても、何かの拍子にガタンとくずれ、今までの努力が水泡に帰すことだってあるんです。やはり、生き物が相手ですから。」
生物を扱うが故の予測不能なアクシデントも含め、喜怒哀楽すべてをこの仕事に注ぎ込んでいる。
「キーパーの仕事って、グリーンのプロという感じで格好よく思われたりするのですが、肉体的にも精神的にもきつい面が多々あります。本当に好きじゃないと続けられません。私はゴルフ以外の趣味はないに等しいし、芝管理の煩雑さも含め、この仕事に入れ込んでいますね。芝は同じように作業していても決して同じ結果にはなりません。挑戦の連続ですが、せっかくこの仕事に就いているのだから、その無理難題も楽しんでしまおうと思っています。」
挑戦という点では、かつてトーナメントも行われたコースを、今どのように整備するかという難しさも抱える。
「理想はプレーヤーすべての方が楽しくラウンドできるゴルフ場であること。それが一番ですし、そこを目指してコース整備を行います。上級者も初心者もともに楽しめるコースはどうあるべきだろう、と様々に模索してきました。現在は、9ホールの中で3・3・3の割合で難易度を高・中・下と変えています。こうすることで、レベルに関わらず楽しめるコースになっていると自負しています。
お客様が増える土日には簡単なところにカップを切る、というゴルフ場さんもあるかと思いますが、それをやりすぎると芝が傷むので、ウチではやっていません。」
お客様の満足度を上げ、なおかつ年間を通して芝の良好な状態を保つことが巻島氏の目指すところだ。
夏をどう乗りきるかはゴルフ場の切実な課題
一年を通して温暖な気候に恵まれる岡山県だが、近年の夏の猛暑はキーパー泣かせ。夏越えは一番の課題だという。
「芝は当初ペンクロスでしたが、今はインターシードで第3世代のクリーピングベント種子を使用しています。色々テストしてみて、ここのコースには一番あっていると判断しました。対暑性能に優れているので、管理がしやすいんです。」
そして夏越えの重要なパートナーがバイオメンテナンスの資材である【夏の活緑】。酵素、補酵素とともに、高温時にも補給・転換しやすい糖・有機酸・アミノ酸が配合されているC3型芝の夏越専用製品だ。
「【夏の活緑】を使うと、芝が元気になるという感じがありありとわかります。目に見えて効果が分かりやすい資材ですね。さらには、刈り込み量を指標にして量を調節しながら【Dr.芝用補酵素】を散布しています。【Dr.芝用補酵素】は通年使っていますが、刈り込みが多い夏場は散布する回数が頻繁になりますね。」そして夏を乗り切るために重要なのが水のやりくりで、非常に苦労している点だ。
「水をどう確保するか、というのはどこのゴルフ場さんも頭を悩ます問題だと思いますが、当カントリークラブの水源は溜め池で、無尽蔵に水が汲めるわけではありません。特に夏場は、どこにどれくらい撒くかその配分を慎重に考えますね。基本はグリーンを一番に守って、フェアウェイやティーは枯れない程度に持たせる工夫をするということになりますが、これも日々、芝の様子を確認しながら散水量を決めています。」
冬場のメンテナンスのポイント
現在、久米カントリークラブでは【夏の活緑】・【冬の活緑】や【Dr.芝用補酵素】のほか、【ブンカイザー】、【バイオCAIYA】、【有機酸1番搾り】を用いてメンテナンスを行っている。
「何かいい資材がないかと探していた時に、セミナーで知ったのがバイオ資材でした。自然循環の発想に基づいている点が非常に興味深かったですね。農薬を減らしたい、環境に優しいものを使いたいという思いは前々からありましたから。当初は関東地方でのみ販売されていたのですが、しばらくして中国地区でも販売開始するというので、早速使ってみることにしたんです。」
使い始めて程なく手応えを感じたという巻島氏。「今までとは違うな、という実感が持てましたね。芝が元気になっているのがわかりましたし、農薬の量も1/3くらいに落とすことができたんです。それからは、どういう場面でどのバイオ資材を使うのが効果的かを考えるようになりました。
夏場、病気耐性に強い土壌作りをするために【Dr.芝用補酵素】や【バイオCAIYA】を使ったり、土壌分析でリン酸過多や酸性に傾いているという結果が出た場合は有機酸キレート剤である【有機酸1番搾り】を投入したりして、土壌改善を行っています。又、【有機酸1番搾り】は効率的に蓄積糖の補給もできるので重宝しています。」
そんななか、重要な改善ポイントであると気づいたのが、意外にも冬場からのメンテナンスだという。
「冬場に【ブンカイザー】を使うのが土壌改善のポイントのひとつだと思います。冬場は地温が下がるとサッチの分解力が弱まるため、多めに散布するんです。秋の終わりくらいから透水量が際立って落ちてくると更新作業ができない場合がありますが、その時に【ブンカイザー】を投入するとかなり水のヌケが良くなります。冬場は規定量の3倍くらい入れています。芝が伸びない時期でもサッチを分解して透水性を高めるというのも一つのメンテナンス手法だと思います。」
優先順位をつけ、最少の投資で最大の効果を
限られた予算の中で、何を優先して芝管理をするか、を検討するのもグリーキーパーの重要な仕事。
「メンテナンスのプライオリティは常に私の頭の中を駆け巡っていますね。確かにもう少し予算があれば、こんなこともあんなこともできる、と考えないでもありませんが、そんな風に潤沢に管理予算があるゴルフ場さんは滅多にないでしょう。鈴木さんなど代理店さんの智恵を拝借しながら、最小限の投資で最大の効果を得られるようなメンテナンスを目指しています。」
土壌改善は確実に進んでおり、コシがあってつややかな芝が育っている。しかしそれは毎日の努力の積み重ねだ。
「常にお客様がプレーできる状態にしておくのが私たちの仕事ですが、思わぬようなアクシデントもあるし、急激な天候の変化もあります。やはり日々切磋琢磨、なんですね。たくさんの知識を蓄え、色んなケースを経験し対処していくことが、私たちの成長につながり、良いグリーン作りにつながる。お客様が『いいコースだね』と言ってくださることが大きな励みです。この仕事をやっていてよかったと思う瞬間ですね。これからも、バイオ資材を使いながら、試行錯誤を重ね、最善のメンテナンスを追求していきたいと思います。」
より良いグリーンコンディションを目指し、巻島氏の挑戦は続く。
代理店:アサヒカワ(株)
環境サービス事業部 鈴木茂
久米カントリークラブさんとのおつきあいは12,3年になります。巻島さんには当初から積極的に使っていただいています。その使用感、効果をお聞きして、製品改善の参考にさせていただいています。
管理コストの削減が必須である昨今、バイオ資材を使いなるべく少ないコストで効果的にメンテナンスする仕組みがますます大切になってきていると感じます。その点を踏まえ、巻島さんにご相談しながら、今後もより良い提案、サポートさせていただければと考えています。