お蔭様で、バイオビジネス普及会の活動もスタートしてから早18年という歳月が流れました。
この活動の原点はどこにあったのか?
当時の会員向け資料からこれを少し振り返ってみましょう。
「バイオメンテナンス」について
「バイオメンテナンス」は、日本各地の先駆的なグリーンキーパーの皆様と共に考え、共に開発を行ってきたなかで、生み出された「グリーンメンテナンス」の手法の一つであります。
この手法は、先輩の木村氏の遺功を継ぐものです。木村氏は、日本帝国陸軍の「諜報謀略の科学化の中枢」として設立された旧陸軍中野学校の卒業生であり、1974年にルバング島から帰国した小野田寛郎元少尉も同卒業生です。
木村氏は、「日本で最高の肥料を作る」と豪語して、微生物を利用した「エコノミックメンテナンス」なるものを考案、「〇コノミン」「〇ートミン」「〇ーキゲン」なる製品群を開発し、全国に販売をしていました。
木村平八郎氏の意図した、化学肥料や化学農薬に頼らない「自然循環」の思想を受け継ぎ、微生物資材を発展させたものが、「バイオメンテナンス」です。
この手法は、現場のグリーンキーパーの皆様と「現場に即し」「現場で役立つ」ということを基本として開発されています。製品自体は、改良に改良を重ね、全く別なものとなっていますが、その精神は受け継いで来ています。
微生物製品から「微生物の出す酵素製品」更に「酵素を補う補酵素製品」の開発、そして「微生物製品」との相互補完作用、そして「自然循環」を基本的な考え方の中心に据えています。また、メーカーとして単独に開発したものでもなく、農業用資材の転用でもありません。多くの製品が農業用資材の受け流し、転用であるのと異なり、グリーンキーパーの皆様と共に開発してあることが、グリーンメンテナンスへの製品の汎用性、利便性を高める要因となっています。
私ごとになりますが、大学卒業後、某大手製薬メーカーに15年ほど勤務していた中で、入社当初、大阪薬科大学で学んだ後、入社した故松村茂氏に公私に渡りご指導を賜り、それが大変に役立ちました。松村茂氏の卒業論文は「またたび」についての研究であり、氏からプロパー活動を終えた、深夜1時~2時までの連夜の講義、教えを受けた内容には、生薬学の基礎、漢方薬の基礎が多く含まれていました。
勤務した大手某製薬メーカーは、人体の薬の販売でありましたが、ここで「医薬部外品」が日本独自の法律であることを知り、独自の「医薬品でも雑貨でも化粧品でもない、新たな市場」の開発の命を受けて、市場開発の任務を遂行致しました。(医薬部外品は、輸出する時は、医薬品か雑貨か化粧品かの分類を迫られることになります。現在の「機能性食品」という分類の発想は、こうした伝統を引き継ぐものです。)
こうした中に、当時はまだ市場が無かった「ペット薬市場」「健康食品市場」「理美容の医薬部外品市場」などが含まれていました。現在の製品開発の基礎がこの当時から、育まれていたのでしょう。
この製薬メーカーを退職して薬局開設を手伝い、末端の消費者に直に接するようになり、農家の方々が自分で使用した農薬被害で大変苦しんでいることも知りました。農薬は農産物の安定供給に大変役立っていますが、人体への影響も両刃の剣であることを痛いほど身に染みて感じたのです。
この後勤務した農業用製品メーカー・ベンダーである某資材メーカーで、大手量販店のケーヨーホームセンター、カーマホームセンター、ジャンボエンチョーなどへの園芸用品・農薬・資材一般を扱うこととなり、ついで経済連・農協のルートを経験し、この時に農業試験場と農林事務所の職員は交互交流、人事の入れ替えがあることも知りました。
肥料協会を通じての、県の試験農場での試験圃場内容は、現在の製品開発の知恵として大変に役に立っています。
地球上には、動物と植物が生存しています。面白い事に多くの植物は動物性の有機物を好み、多くの動物は植物性の食べ物を好みます。地球上に生存する生物は、それぞれ補完性を持っているのではないかと思わせるような事実です。人間のような雑食動物でも、動物性の蛋白質よりも、植物性の蛋白質の方が、健康には良いような気が致します。そして、全体的にはバランスを保って、生存しているように思えます。
現在の文明が、植物生育地域を侵食して、植物生存圏を縮めていることが、環境破壊というような表現になっていて、いずれ動物生存圏に影響が出てくる可能性があります。(地球温暖化説などもその一つです。)
植物の病気、動物の病気を観察していますと、植物の病気は「糸状菌」、動物の病気は「細菌」によるものが多いことに気づきます。そして、「菌類」と「細菌」と「ウィルス」という目に見えない「微生物」の世界に関心が寄せられます。実は、人間を地球の大きさに拡大して、初めてウィルスがネズミ程度の大きさになります。この時に細菌はクジラの二倍程度に、糸状菌は、高層ビルよりも巨大な建築物に匹敵する大きさになります。
実は、目に見えない微生物の世界でも、こんなに大きさが違っているのです。
そして、植物が光合成で作りだしたものを、動物が消費し、そして微生物が最終分解して自然の循環がなされているのですが、分解の過程では、大きな有機物はおおきな微生物が分解し、中くらいにして中くらいの微生物に、そして小さな微生物にバトンタッチして最終分解されて行くのです。
特に、細胞膜の外側に更に「細胞壁」がある植物性有機物は、おおきな体の糸状菌が先に分解するのに対して、「細胞膜」だけの動物性有機物は、細菌が分解するのです。生きているうちに、生きている細胞が侵食されると、病気ということになるのです。
自然循環の一助としての「バイオメンテナンス」を実施する資材は、循環をスムースに行うことで、芝草の生育環境を整え、芝草のクォリティを高め、芝草の病害を少なくするものです。自然界は、もともと微生物が先に存在し、そこに植物や動物が順次、発生して来ています。世界は微生物に満ちているのです。
ですから、後で発生してきた植物も動物も微生物を取り込み、共存共栄を図って来たのです。(腸内大腸菌もビタミンなどを人体に供給しています。)
ウィルスでさえ、人類の発展に、突然変異要因として貢献している可能性が高く、細菌も糸状菌も、圧倒的に役立っているものが多いのです。こうしたことが分かると「抗菌グッズ」とは何なのか? 考えさせられます。
そういえば、芝草の病害菌といわれている「細菌病の原因」とされている「シュードモナス」「キサントモナス」などは、霜を作る「氷核細菌」の仲間であり、霜が降りる場所には、必ずいます。常在菌なのです。
ところで、微生物の栄養摂取は、私たちが体内で消化液を出して消化するのと異なり、体外に消化液を出して分解します。これを「体外消化」と呼んでいます。微生物には手や足がありません。微生物同志の戦いも、実はこの消化液で行うのです。ですので、微生物の効力の本体は、この消化液(酵素)とも言えるのです。
良く知られている微生物の消化液(酵素)には、青カビの出している「ペニシリン」があります。そうです、「抗生物質」と呼ばれているものです。これ以外に放線菌の出している「マイシン」類、細菌の出している「抗生物質」が次々と発見され、製品化されてきています。これらは医薬品となっています。
実は、微生物の出している「酵素」は、医薬品ばかりではありません。味噌や醤油などの糸状菌の仲間である「酵母」「麹菌」などの醗酵酵素、「乳酸菌(ラクトバチルス)」によるヨーグルトやカルピスなども、その副産物なのです。
ゴルフ場の芝草管理で、一番の問題点は、「肥料をやっては刈込む」「肥料をやっては刈込む」「肥料をやっては刈込む」「肥料をやっては刈込む」という作業を繰返すことです。
このこと自体に問題はないのですが、植物は地上部と地下部のバランスを持って、生育していますので、刈込まれた地上部に匹敵する地下部が残留してしまうことです。どうしても、自然の分解では追いつかなくなるのです。残ってしまうのです。
これを「未分解サッチ」と呼びます。根は本来「白い」のですが、根の回りに休眠組織が付着して残り、「褐色」の根になり、次は「層」を成して、不透水層を作り出します。ここに病原性の高い「ピシウム」や「フザリウム」や「リゾクトニア」などの微生物が繁殖します。また、昆虫類はここに産卵をして行きます。病害虫の温床となりやすいのです。球の走りも悪くなります。
草類の未分解成分は繊維質であり、多く「セルロース」「ヘミセルロース」で構成されています。
そこでよく、バチルス(細菌の仲間、桿菌)で分解を進めようとする研究者もいますが、稲ワラや未分解サッチには、もともとバチルスは多く存在し、細胞壁のある植物組織の分解には適していません。やはり、それらの分解酵素である「セルラーゼ」「ヘミセルラーゼ」を沢山分泌する微生物、または「それらの酵素」そのものを使用するのが最も効果的であります。
開発当初、世界的な紙メーカーであるO〇製紙元開発部長のY氏は、そんな高価な酵素を使えるわけがないから別な方法を考えた方が良い、とアドバイスをしてくれていました。ところが敢えて、その「セルロース」を使った「未分解サッチ」の調整に乗り出したのです。そして開発した資材が「ブンカイザー」なのです。「バイオメンテナンス」の中核を成している資材です。
セルラーゼを分泌する微生物にはバチルス(桿菌)、放線菌などがありますが、量が少ないのです。アルスリニウム、フミコーラ、トリコデルマなどの糸状菌の仲間の方が勝れているのです。私どもは、トリコデルマの中から、特に優れているものを選抜し、ここから酵素を取り出し製品化を図りました。
この世の中は、「菌」の巣窟です。「菌類」「細菌類」「ウィルス」、これらは、地球上に、あらゆる場所に満ち満ちています。もともと、植物や動物が出現する前より、地球上に満ち満ちていました。こうした微生物の力で、微生物の助けを借りて、微生物と共存することで、植物も動物も生命を得ているのです。そして、私たちの生物の進化には、これらの微生物の影響が欠かせない存在なのです。
このことが、「バイオメンテナンス」を行う上で、最も欠かせない「基礎知識」なのです。「微生物の力を利用」「微生物の出す酵素を活用」「酵素を補う補酵素」これらの知識が必要なのです。
人体には、自己の細胞より多い数の微生物が棲息していると言われています。(体重60Kg程度の人なら約60兆個の細胞、そして60兆個以上の微生物がいると言われています。)そして、多くの微生物は無害なのです。ウィルスでさえ、病害性を持つものは少ないのです。更に、微生物には「悪玉」も「善玉」もいないのです。人間にとって「都合が良いか悪いか」という問題にすぎません。
やや古い記事になりますが、2009年6月28日の讀賣新聞19面「くらしと教育」のページに、アメリカの国立人ゲノム研究所の調査で、人の皮膚から205属、約1000種の「細菌」を確認という記事が掲載されていました。205属、約1000種、約60兆の「細菌」が人に同居ということでしょう。
まさに、微生物にとっては、人体は「地球規模」の住処ということになります。身体の部位によって、様々な菌が棲息しているのです。まるで、地球上でも地域によって生物が異なるのに似た様装を呈しているのです。
皮膚の細菌には、古い細胞や皮脂を食べたり、他の病原菌を撃退したりする人にとっては善玉菌も含まれています。ですから、細菌の棲息状況に異変が生じると、人の皮膚の健康状態にも影響が考えられるのです。
本日は一旦このくらいで切り上げ、酵素・補酵素のお話などはまた改めて新たなトピックとして報告しましょう。