微生物のお話の続きです。
同時に、同会研究部が「あんな話、こんな話」の欄でも微生物に関して話を展開しておりますので、そちらもご覧頂ければ幸いです。ジメジメと蒸すの季節に突入し、微生物君たちにとっては居心地の良い季節になりました。本日はそんなことにも触れていきましょう。

微生物は、遥か空の彼方から海の底にまで、あらゆる所に満ち溢れています。
特にカビの多い所は、日本。冷蔵庫の中、エアコンの中にも蔓延り(はびこり)易いのです。

地球上の微生物の中で、カビは約36%前後を占めると言われています。北極や南極にも存在します。胞子の状態で休眠していますので、どこにでもいます。何かに取り付いて、初めて息を吹き返して、取り付いた物を分解しながら栄養分を取って増殖して行きます。

雨の多い、湿気の多い日本は、カビにとって都合の良い条件が揃っているのです。
特に日本の冷蔵庫の中は、カビで満たされやすいのです。冷蔵庫の扉のパッキンが黒ずんでいたら、もう間違いありません。冷蔵庫の中は、5℃で、密閉され、遮光されています。加えて中の掃除もされていない場合が多いのです。冷蔵庫の中は不潔そのものです。(因みに、冷蔵庫内の手入れは、月に一度は扉を開いて、中を乾燥させ、薬用のエタノールで拭き掃除をすると良い。)

次にエアコンです。エアコンは室内の空気を吸い込みます。エアコンのフィルターはカビの巣です。まめに掃除をしないとカビの胞子を部屋中に撒き散らすことになります。掃除機のフィルターも同様です。気付きにくいのが化粧品です。一度蓋を開けてしまえば、空気と触れ合い、素手で取扱えば化粧品の中身はカビの大好物が詰まっているのです。すぐに大繁殖してしまいます。部屋でペットを飼うのも要注意です。これらも雑菌の宝庫です。ヘビやトカゲ、亀などはサルモネラ菌の宝庫でもあります。口移しに犬や猫に餌を与えたりしたら、もう危険そのものです。

次にカビ取りスプレーです。これは、使い方によっては、カビの増殖機とも化す代物です。その場でカビを除去しても、原因物質を取り除かないで済ましてしまうことに大問題があります。(この事は、ゴルフ場などの殺菌剤の使用などにもあてはまります。)カビはアルコールやアルカリ液には弱いので、カビ取りスプレーの成分となっています。一時的にカビは除去されますが、この「無菌状態」は逆に除去成分のアルコール成分が揮発したり、アルカリ液が洗い流された後には、カビの大繁殖を招き易いのです。ゴルフ場で言えば「未分解サッチ」を取り除かないで殺菌剤に頼るメンテナンス、家庭で言えば、汚れを除去しないでカビ取りスプレーだけの連用は、根本原因を取り除かない、極めて危険な対処方法と言えます。薬が効いている間だけは良いけど、その後は逆効果に陥りやすいのです。

カビ大国、日本での「身のまわりのカビ」を紹介しましょう。

通 称 属  名 特  長
クロカビ クラドスポリウム 家の中には、どこにでもいます。
アレルギーの原因にもなります。低温、乾燥にも強い。
アカカビ フザリウム 農作物の病原菌です。
プラスチックも腐食させます。
カビ毒を出す物もいます。
アオカビ ペニシリウム 餅やパンにつきます。毒素を出すものもいます。
チーズ作りやペニシリンなどでは人の役に立っています。
ツチアオカビ トリコデルマ 木材やパルプを腐らせます。
5℃~6℃でも繁殖します。
アレルギーの原因にもなります。
ススカビ アルテルナリア 農作物の病原菌です。
プラスチックも腐らせます。
喘息の原因菌です。
コウジカビ アスペルギルス 味噌、醤油、日本酒、などの製造に利用されています。
カビ毒を作るものもあります。
黒色酵母 オーレオパシディウム 農作物の病原菌です。
タイルの目地などに生息します。太陽光線、乾燥、低温にも強いカビです。

ガラスやアルミなどにもカビは取り付き、そこで増殖して行きます。金属やプラスチック、CDやDVDにもカビが付いています。まさに、抗菌グッズなど刃が立ちません。

ですから、カビは除去するよりも、利用することを主眼におくべきといえましょう。

明日の東京の天気は「晴れ時々曇り」となっていますが、皆様の地方ではいかがでしょうか?良い週末をお過ごしください。