2006年、「ネイチャー」に、ジェフリー・ゴードン博士が発表した「デブ菌」と「ヤセ菌」の研究は、その後、多くの科学者によって研鑽され、発展を遂げて来ました。

日本では、営業的に利用されて、誤って伝えられている面も多く、代表的なものが「乳酸菌飲料で痩せる」などというデマです。また、理論の骨子であった「短鎖脂肪酸仮説」も実証されていません。「酪酸菌」「酢酸菌」の臨床試験値も発表されていますが、それが「肥満」との因果関係を示すものではありませんでした。

人の腸内には、1013個余の微生物が生きています。この腸内微生物群を総称して「腸内フローラ」と呼んでいます。名前通り「お花畑」で、人体の消化活動を助け、様々な代謝に関与しています。人の脂肪の代謝に関与している微生物を、ゴードン博士が、「デブ菌」と「ヤセ菌」に分類しました。

ゴードン博士は、「デブ菌」を「ファーミキューデス類」、「ヤセ菌」を「バクテロイデス類」と分類しました。「ファーミキューデス類」は、食べた食物を分解、吸収させて栄養を提供する微生物群のことです。「バクテロイデス類」というのは、短鎖脂肪酸を出して、脂肪の吸収を抑制したり、燃やしたりする微生物群のことです。

デブ菌

ファーミキューデス門

(グラム陽性細菌門)

バチルス網 バチルス目

ラクトバチルス目

クロストリジウム網 クロストリジウム目、他3目
エリシペロトリクス網 エリシペロトリクス目
ネガティウィクテス網 ネガティウィクテス目
テルモリトバクテル網 テルモリトバクテル目
ヤセ菌

バクテロイデス門

(グラム陰性細菌門)

バクテロイデス網 バクテロイデス目
フラボバクテリア網 フラボバクテリア目
スフィンゴバクテリア網 スフィンゴバクテリア目

 

腸内微生物と肥満との関係は、実際「太った人」に「デブ菌」が多く、食事指導で痩せさせた人に「デブ菌」が減ることでも関連性があることは指摘されていますが、その原因・結果が科学的に証明されていないのです。

近年、中国とスウェーデンの研究チームが、ブドウ糖と脂肪の代謝で重要な役割を担っている「酪酸」を産出する腸内微生物菌群が減少すると「糖尿病(Ⅱ型)」になりやすい、と「ネイチャー」に発表しました。また、ブラジルの研究チームは、その腸内微生物群の一つに「ビフィズス菌」があることを突き止めました。