前筆、江戸時代の「泥肥」の項で、「田圃の底土」について触れておきました。

「田圃の底土」は、静岡県の温室メロン栽培で、以前は「床土」に使われていました。また、「田圃の底土」を一握り放り込めば、たちどころに「汲み取り便所の臭い」が消え失せたことも書いておきました。

 

ドブ臭のする「ヘドロ」と、「田圃の底土」との違いについて説明致します。

 

その前に、静岡県の温室メロン栽培について、簡単に概略を説明しておきます。

高品質栽培をしていますので、かなり高度な栽培技術で育てています。

まず、壊疽病、つる割れ病、モザイク病などを出さないように、床から離してアルミ製の隔離ベッドに、幅約60cm、深さ約15cmの栽培床を作ります。土壌消毒、種子消毒を徹底して行います。・・・これに使う土を昔は「田圃の底土」を使っていたのです。田圃の土の、その下の土を取り出して、中腰で「団粒化するまで練り上げた」のです。・・・この「粘り床」に、夕顔などを台木として接ぎ木した苗を徹底した温度管理(日中28℃~30℃、夜間20℃~22℃)と水分管理をして、1株1果に絞り込んで育てるのです。

一般的な作物は、EC(電気伝導度)0.4~1.5程度で育てるのですが、pH5.5~pH6.5の中で、温室メロン栽培後期には、EC2.0以上の高濃度肥料で栽培する場面が多いのです。

 

日本などの火山灰土壌には、竹や笹や稲などの「ケイ酸植物」が適していますが、これ等の芝草やイネなどの未分解残渣物には、アルミナケイ酸が粘土として溜まり込み、これが有機物分解の妨げとなり、田圃の底土には、「粘土と腐植」の長年にわたる「特有の底土」が形成されるのです。

こうして、例えば砂土のCEC(陽イオン交換容量)3~10、多腐植性黒土でさえCEC30~40に対して、CEC100~600という、とてつもない「底土」が出現するのです。

 

この「底土」は、アンモニア(NH3)、メタン(CH4)などの悪臭を立ちどころに消して、透水性と同時に保肥性の高い、団粒化したゴロ土、超高濃度の肥料培土であるメロン培土を可能にしているのです。