最近、美容院で自然原料の「ヘナ染色法による髪染め」が話題を集めています。
日本には、昔から「藍(あい)染(ぞめ)」という技法がありました。近年では「Japan Blue」と呼ばれています。藍には、解熱・解毒・血液浄化の働きがあり、藍染にも防虫効果、毒蛇忌避効果があり、色重ね染めによる強度、防火、保湿効果で道中着や火消半纏(はんてん)や、蚊帳(かや)、産着(うぶぎ)、手拭(てぬぐい)などに使われて来ました。
染める「色素」は、インジゴという成分です。インドキシルにグルコースが脱水結合した形の配糖体であるインジカンが前駆体で、空気酸化によりインジゴ色素に変換されます。(インドキシルはオキシドールの構造異性体です。)
タデ科の「タデアオイ」の他に、インド産「キアイ」、熱帯アフリカ産「ナンバンコマツナギ」、琉球産「キツネノマゴ科の琉球藍」、アブラナ科「大青」などが原料となります。
一般に植物染料は、煮だした液に浸して染めますが、藍染めは水溶性ではなく染まりません。その為、醗酵という作業が必要なのです。微生物醗酵により還元状態を作りだすのです。還元菌を使い、還元酵素によりインジゴを還元するのです。インジゴは還元されると水に溶けやすいロイコ体になります。このロイコ体を染めて空気中の酸素により、酸化させてインジゴに戻し染色するのです。(ロイコ体は黄緑色です。)
還元菌は、1μ×3μくらいの桿菌、または円筒状の細菌です。鞭毛をもっています。胞子で増殖します。生育適温は20℃~35℃、適した環境はpH10~pH11.5、好気性菌です。
還元菌の出す還元酵素の活性条件は、適温45℃~50℃、最適環境はpH9.6以上でpH10.5が最適、ph11までです。
こうしたアルカリ環境を保つ為に、硬い木の灰汁を使います。そして、醗酵させます。時に消石灰や水酸化ナトリウム、そしてブドウ糖を添加してpHの調整をします。
冒頭に書きました「ヘナ染髪法」は、沖縄栽培ヘナ、琉球藍を使った髪染め方法です。上記の還元醗酵と還元酵素の働きを、化学的に処理し、皮膚炎や化学薬品かぶれを無くした染髪法として注目されています。